植物も、ヒトや動物と同じように病気にかかります。病原体がどのように植物に感染するのか?そのメカニズムを解明することは、病気の治療・予防につながる重要なテーマです。私の研究室では、病原微生物が植物に病気を引き起こす仕組みを分子レベルで解明することを研究テーマとしています。ゲノム解析などの最新技術を活用して感染メカニズムを解き明かし、植物を病気から守るための新たな分子基盤を構築することを目指しています。
当研究室で研究対象の一つとしている微生物「ファイトプラズマ」は、植物の篩部(しぶ)細胞内に寄生する病原体です。ヨーロッパで年間数億ユーロにのぼる被害を出すなど、世界中で多くの農作物に被害を与えており、この病気の蔓延を防ぐことが近年の重要な課題となっています。感染した植物は萎縮したり、枝分かれが激しくなるなどの症状を示すほか、花が葉に変化するなど、特徴的な病徴を示します。
一方で、この病気が商業的に利用されている例もあります。ポインセチアは、クリスマスシーズンになると欠かせない観賞植物ですが、最近好まれる枝分れが豊富で小さなタイプは、実はファイトプラズマが感染し、矮性化しているものなのです。「植物の形をあやつる新技術」の開発も視野に入れながら、ファイトプラズマが病気を引き起こすメカニズムの解明を目指しています。
図1.ファイトプラズマ感染によって花が葉に変化したアジサイ(右)
図2.(左)ファイトプラズマ非感染ポインセチア
(右)ファイトプラズマ感染ポインセチア