環境問題の解決には日々変化する自然環境を正確に把握し、適切な対策を講じる必要があります。私の研究室では先端化学を基礎とし、環境中の有害化学物質の動態を正確に分析評価すると共に対象汚染物質の回収に適した環境に優しい材料を開発しています。例えば、福島第一原発事故により土壌中に飛散した放射性セシウムの化学形態を把握し、天然に多産する機能性材料であるゼオライトや粘土鉱物による回収および長期安定化法の開発を行っています。
福島第一原発事故により飛散した放射性物質の回収・安定化法の構築は日本における喫緊の課題です。また温室効果ガスや微小粒子状物質による大気汚染、重金属による水や土壌汚染などのグローバルな環境問題への適切な対応も求められています。私の研究グループでは先端化学を基礎とし、個々の環境問題を正確に把握すると共に対象汚染物質の回収や安定化に適した「環境に優しい材料」の開発を行っています。その中でも特に着目している材料がナノ細孔を有する無機イオン交換体のゼオライト、層状複水酸化物および粘土鉱物です。これらの材料はケイ素、アルミニウム、酸素、ナトリウム、マグネシウムなど地球表面に豊富に存在する無害な元素から構成され、環境に優しい材料です。また基本構造を保持したまま有害物質を回収できるため、循環利用可能な材料でもあります。研究室では、これらの材料の機能を十分に発揮できるよう基本構造やイオン種の制御など材料の物性に関わる基礎研究から、機能性材料との複合化や多孔質な造粒体の作製などの応用研究まで幅広く取り組んでいます。環境問題を解決する材料開発は私のライフワークであり、持続可能な社会の構築のため積極的に推進していきます。