病気や怪我をした患者さんに、直接手を触れて治療できるのは、医師を初めとする医療資格を持つ人達です。しかし、毎日の医療に忙しい医療スタッフは、自分たちで治療に必要なデバイスを開発することはできません。私たちは、医療現場でのニーズを知り、その要求に応えられるように色々な技術を組み合わせることで、新規の人工臓器やドラッグデリバリーシステムを設計・製作・評価しています。既にメーカーと共同して、開発が進んでいるデバイスもあります。
人体は、心臓のポンプ機能、肝臓の化学反応機能、肺のガス交換機能、腎臓の濾過機能など、まさに精密な化学工場に例えることができます。そこで私たちの研究を遂行する上で鍵となるのは、物質やエネルギーの収支をとり、無駄のない運転条件を決定する化学工学の手法なのです。
医療スタッフが直接治療を施すことができる患者さんの数に比べ、私たちが設計・製作したデバイスで治療を受ける患者さんの数は、数倍になるかも知れません。その意味で私たちの研究は、間接的ではあるものの、医療スタッフと同じレベルで医療に貢献できる可能性があるのです。