ヒトから大腸菌まで、すべての生物は生命の本質を担う全遺伝情報ゲノムをもっています。莫大な種類の生物ゲノムが解読された現代、「ゲノム科学」はさまざまな分野で重要な学問となっています。当研究室では、単細胞生物である細菌の環境応答能力や増殖能力を、ゲノム機能ネットワークとして理解する研究を行っています。また、これらの研究を通して、新しい技術の開発や産業へ応用する課題にも取り組んでいます。
環境ゲノムの解析から、地球上に存在する99% 以上の細菌が理解されていないことがわかりました。これらの細菌は生存しているものの、個体を増やす増殖をしていないと考えられています。しかし、このような細菌のゲノムにも、個体を増やす増殖に必要な遺伝子セットをもつことが確認されています。環境中で生存している細菌が増殖を開始する仕組みについて、ゲノム上の複数遺伝子が関わるネットワークシステムとして解明することを目指しています。生物のゲノム上で、異なる複数箇所を改変すしたり、編集したりすることは容易ではありません。この課題を克服するため、新しいゲノム編集技術HoSeI(Homologous Sequence Integration)法を開発しました。この技術から大腸菌ゲノムで30箇所以上を改変したゲノム編集株などを創出しています。ゲノムデザインを実現した大腸菌ゲノム編集株を用い、環境応答と増殖と切り替えるゲノム機能ネットワークについて分子遺伝学的なアプローチから研究を進めています。また、産業利用できる新しい機能をもつ大腸菌ゲノム編集株の創出にも取り組んでいます。
HoSeI法による細菌ゲノム上の複数編集