私たちの体には細胞骨格という運動装置があって、細胞の変形や細胞分裂などの重要な機能を実現する仕組みを備えています。私の研究室では 細胞骨格の力学原理を明らかにすることを目指しています。細胞骨格のダイナミックなふるまいについて顕微鏡を用いて調べたり、力学理論を構築したりしながら、研究を行っています。この研究は物理と生物が融合した新しい学問領域であり、研究を通じて既存の枠組みにとらわれない新しい科学を学びます。
細胞骨格が関わる生命現象は、モーター蛋白と言われる分子の生み出す力が、厳密に制御されることで実現されます。これと同時に、細胞骨格分子が機能を持った構造を自発的に作り出すことが知られています。このような自発性は生命を特徴付ける性質の一つです。このような自発的な構造ができる仕組みは明らかにはなっていません。さらに言えば、数ミクロン程度の小さな構造を、厳密な制御を介さずに作り出すことは、我々の科学技術では実現されていません。私たちはこの性質を、定量的かつ物理的に解明することを目指して研究を進めています。これにより、今までのデザイン原理とは根本的に異なるスマートな微細構造の設計にヒントを与えることができると期待しています。
これらの研究を通じて、複雑な現象を切り分けて、論理的に説明を与える能力を身につけます。この問題解決能力は、分野を問わず現実社会のいろいろな場面で必要不可欠な能力です。