細胞は、常に変化する外部環境に適応したり、機能を持った細胞に分化したりして生存しています。比較的、単純な原核生物である細菌も、巧妙な生存戦略を有し、環境に応じて様々な細胞状態に変化します。私たちは、このような変化のメカニズムを分子レベルで解明することを目指しています。この研究を通じて、遺伝子操作、タンパク質機能解析、顕微鏡観察技術などを習得するとともに、科学的な思考力を養います。
人間を含めて、あらゆる生物は、外部環境に応答し、細胞を変化させ生存を有利にする戦略を有しています。細菌の生存戦略の一つである胞子は、原核生物の中では、特に緻密に形成される細胞分化の例であり、細胞分化を理解する上で、非常に興味深い題材となっています。また、細菌の胞子は食中毒や感染症の発生にも関与しており、医学的にも重要です。さらに、この胞子形成メカニズムを解明することにより、生命科学的な意義だけでなく、胞子を環境浄化、ドラッグデリバリー、バイオリアクターなどに利用する応用研究に活かすこともできます。
一方、コレラを引き起こすコレラ菌に代表される、ビブリオ属細菌は、胞子を形成しません。しかし、「生きているが培養できない」状態に変化することができ、一種の休眠状態と考えることもできます。このような休眠細胞は、感染症の流行が終息した後に、再び、流行が発生するメカニズムに深く関与しています。
私たちは、このような細菌の生存戦略機構を分子レベルで解明することを目指しています。