私は日本の怪談文化の研究をしています。研究室では、「日本文化における不思議なもの」を文化的な観点から学ぶことができます。例えば、昔の人々は災害の原因として妖怪を想定しており、様々な怪談を残しました。これらを近代科学的な考え方から誤りとみなすのではなく、日本人の精神文化遺産としてとらえる研究をしています。科学の思考方法とは異なる、前近代的な物の考え方にはある種の普遍性があり、実は現代の日本社会にも生きていることを学んでほしいと思っています。
古くから語り伝えられてきたことわざや俗信、過去の文学作品や、絵画資料からは、昔の人々が自然現象を不思議と感じながら理解し、何らかの表現行為をしようとした姿勢が伝わってきます。
時間的に異なった文化、異なった価値観にふれることは人の想像力と思惟の力を鍛えます。理系ジェネラリストとして社会に出て行く学生には、科学的思考を外から見る視点と、自分の考えを言葉でわかりやすく伝える表現力が必要です。「資料を調べ、読みとき、分析して自分の言葉でまとめる」という、文系的な基礎作業を経験しておけば、将来社会に出た時に、自分の能力を充分発揮できると期待しています。